move on

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4年ぶりに帰ってきた。
ぼくの選手キャリア最後のまち蒲田にある大田区総合体育館。

【大学バスケ・インカレ2021】大田に帰ってきた男(環太平洋大学 中川和之監督)

 

平日月曜日であるというのに
目の前には観客席の一角を埋める応援団の姿が確認できる。

東京時代のファンの方や
商店街でお世話になったほとんどの方とは、
蒲田を離れて以来会っていなかったにも関わらずにだ。


家族や友人ら、先輩達も
仕事を休んで応援に駆けつけてくれ、
東京なのにチームIPUが出来上がった
かつてのホームコート。

試合中、
感謝の心でいっぱいになりながら
ずーっと思っていたことは…


「またここに戻ってこれて本当によかった」

蒲田に。そして、インカレの舞台に。

@大田区総合体育館 インカレ初戦 vs 松蔭大学

…バラバラになりかけていたひとつのチームが
たったの1年余りで生まれ変わり、
再び最高の舞台で踊ることができた。

“あっという間の40分間”

そんな表現以上に短く感じるほど
心の底からその一瞬一瞬を楽しみながら。

昨年は、唯一開催となったインカレ予選。
そのDO or DIE GAMEの1試合に大敗し、
そのままシーズン終了。

このたった1試合のみで4年生は引退となった。

…その後、チームも1回崩壊した。

当時の気持ちを振り返ると、
それはアメリカでのプロ1年目に
GMから解雇を告げられた時の感覚に似ていた。

不思議な孤独感、疎外感が
晴れの国岡山の平和な町の空気と相反して自分を包み込んだ。

敗戦のショックも引きずり、
地の底まで凹みきった頃に
ようやく”あること”に気がついた。


「変わるべき、成長するべきは自分なのだと。」


一時期は人の話すことのほとんどが耳に入らず、
コーチングについての学びも頭に入らないことがあった。

自分を正当化することで弱さを隠し、
自分が傷つかないために人を威嚇、攻撃し、
自ら孤立していった。

そんなもがき始めのタイミングで
B級コーチ養成講習会に参加。

人生で一番貪欲に学び、知識を吸収し、
とにかく少しでも変わろう、成長しようと必死だった。




@茨城県つくば市 3月のB級コーチ養成講習会 

そこから、
自分のやるべきことがより明確になった。

石頭も少し柔軟になり、
人の話に耳を傾ける機会が急増した。

それと比例するかのように
コート上の選手の表情やパフォーマンス、
チームの状況が好転していった。

今年も前期の時点では
コロナで全ての大会が中止だったので、
すぐに目に見える結果を得ることは出来なかったけれど、
確実にチームは正しい方向へ向かい始めていたと思う。

このタイミングで運命の出会いもあり、
人生がさらに幸転することにニャった。


@自宅 5月末 キジトラのかる君を家族に迎え入れる


今年1年生きてみて感じたことは……

やはり人間は何かを負いながら
歩みを進めていくものなのだな、ということ。

子供の頃はよく遊んで
怪我もしながら歩いてたけど、それはそれで平和だった。

大人になり監督という立場に変わり
大きな責任を伴うようになった今も、
それは決して変わる必要はないものだった。

@オークアリーナ呉 初のインカレ予選全勝優勝後の1枚

歩みを進める道中で失敗や衝突、
後悔という荷物も背負っていきながら

誠実に反省し、人の話を聞き、
謙虚に自分の弱さを受け入れながらも
力強く歩んでいくのが人生だということ。

@倉敷 11月 中国新人大会で初優勝後の1枚
これにより春、秋、新人と中国無敗を初めて達成

そして、今。
これまで以上に大きな節目が来ているように感じる。

これまでは見えなかった、もしくは
見えたとしても中身や輪郭がぼやけていたような景色が
少しずつ鮮明になり始めてきたから。

そんな今年の
ぼくの1年を
漢字一文字で表すと【進】 。


不細工で恥ずかしく情けない歩みもあったけど、
決して悪いものではなかったし、
確実に「前進」することは出来たように思う。


まだまだ道のりは長いけれど、

どんな時も絶対に周りへの感謝と
相手を思いやることだけは忘れず、
バスケットボールへの愛情を胸に前へ進んでいきます。

来年は今よりもっと心を磨き、
また少し人に優しくなれたらいいな。

今年1年間、
お世話になった全ての皆さま、
本当にありがとうございました!


どうぞよいお年をお迎えください!


@大田区総合体育館 初戦敗退後の1枚